暗室では、まずベタ焼き(コンタクト)と呼ばれるプリントを作る。
フィルムを直接、ネガに焼き付けたものだ。
この中から採用のカットを選び、本番のプリントを焼いていく。
モノクロプリントは、セーフライト(赤いライト)の下で作業できるけど、カラーは"全暗"、つまり真っ暗な中でないと、印画紙が感光してしまうのでほとんど手探りの作業だ。
基本的なやりかたは、モノクロの暗室作業と同じ。引き延ばし機のキャリアにネガをセットし、ピントグラスを使い、ピントをあわせる。
(ベタ焼きの場合は、無反射ガラスに圧着させたネガに光を当てるだけで、ピントあわせは必要ない)
適切な露光秒数をあわせ、本番プリントの時にタイマーを使って露光すると、薬剤面に光があたり、感光する仕組みだ。
モノクロと違うのは、引き延ばし機にY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)と3つのフィルターチャンネルがついていること。
この3つのつまみをいじることで、カラーバランスを調整する。
と言っても大体、シアンのフィルターはゼロの数値のままで固定し、YとMの組み合わせを変えることでさまざまな色のバランスを作る。だけどなかなかこの色の感覚を覚えるのが、最初はすごく難しい。
さらに難しい点は、露光時間が変わるとカラーバランスも異なってくるし、色を変えるとそれによって露出係数が変わり、光を当てる露光時間が変わってくること。
なので、一枚の印画紙を縦に5~6枚カットしたテストピースをつくり、何度かカラーバランス、プリント濃度のテストをしたあと、本番プリントを焼く。
露光したプリントの現像は、33.3℃±0.3℃というシビアな温度管理が要求される(液温が一定でないと、カラーバランスのデータが変わる)から、CP32、CP51などの自動現像機(ペーパープロセッサー)を使用するのが主流だ。紙を流し込むだけで一台で現像・定着・水洗を自動的に行なってくれるので便利な機械。
ただ、家庭用プリンタに比べると高額なため、個人の趣味レベルでは試しに使ってみることが難しく、それがネガプリントのハードルを高くしている。
http://www.fujimoto-photo.co.jp/web/products/lucky/processor/index.html
写真を覚えてしばらくした頃、どうしてもカラープリントを自分でやりたくて、当時、新品だと150万以上のプロラボ用引き延ばし機『オメガ ダイクロII』を楽天オークションで落札。本体だけでなくローデンシュトックのレンズ2本付き。
おまけに、ラッキー(藤本写真工業/現ケンコー傘下)で輸入販売をしていたポータブル自家現像処理機、『NOVA』が付いて総額5万円、という超激安価格だった。
これはもう買うしかない!と思い、勢いあまって暗幕やら何やらそろえ、自分の部屋を暗室に改造し夜ごとプリントしていた。
(引き延ばし機があまりに重くて、送料だけで1万5千円もかかったというオチもある)
僕はまともに学校で写真を習ったことがないので、ああでもない、こうでもないと日夜試行錯誤、プリントワークに関する雑誌や書籍を読みまくり、ネットで情報を拾って、独学で覚えた。薬品を調合していて気分が悪くなったことだって何度かある。
でもあの時にいろいろと試行錯誤した結果が、いまの表現に確実に生きている、とも思う。
ちなみに、引き延ばし機についてきた『NOVA』という現像機、トースターのような細長い穴が上部に空いていて、露光した印画紙をその中でチャプチャプ動かして現像や定着をおこなうという、なかなか独創的な機械で(ヒーター内蔵で液温は安定している)、ずいぶんとお世話になった。
水洗、乾燥はできないので、定着後はバットでお風呂場に持っていき、流水で洗い、新聞紙の上でつり下げて乾かすという、超アナログなシステム。
(※現在は販売終了)
http://www.fujimoto-photo.co.jp/web/products/lucky/nova_p/index.html
コストや初期投資は安いけど、手作業でやる分、現像ムラが出やすいという欠点があり、全自動のCPシリーズに慣れたいまとなっては、あらためて買うことはないと思うけど...。
さて、デジタル全盛のいま、東京近郊の人にとってはレンタル暗室がいくつかあるけど、一番困るのは情報と設備のなさだと思う。
とくに東京以外の都市に住んでいる人、僕も以前、地元熊本にいた頃から自家プリントしていたけど、唯一設備のあった大学も外部の人にはなかなか貸してくれなかったり、機材のメンテも不十分でプリントにキズがついていたり、相当苦労させられた。もちろん、個人でおこなう設備投資や材料費など、お金の面でも。
だけど、地方は都市に比べて情報や設備は負ける反面、家賃が安いなど、アドバンテージは絶対にあるので、たとえば写真仲間を見つけて、暗室を共同でつくるなど、いろいろと工夫してほしいと思う。
都内に住んでいる人は、それだけで恵まれた環境にいるわけだから、いずれ...と言わず、すぐにでもアナログプリントにトライしてほしい。
レンタル暗室のドゥプリントでは、ネガフィルムを持っていけばインストラクターの片山さんがプリントの仕方を丁寧に教えてくれます。(2時間5000円・要予約)
「山田敦士のブログを見て来ました」と言っても安くはなりませんが、片山さんはたぶん喜びます。
暗闇の中、浮かび上がる像は、自分だけのイメージの中から立ち上るもの。暗室にこもると、とたんに魔法使いになったような気がする。
そして、デジタルには絶対だせない、独特の色、粒子感といった、言葉ではうまく説明できない『風合い』が、銀塩ネガプリントのもっとも素晴らしい部分だと思うので。

ちょっとマニアックな話を。
ナショナル、現パナソニック社の大型グリップストロボは、通称『ナショP』と呼ばれて長い間、プロフォトグラファーに愛されてきた。

もともと集合写真の撮影などによく使われていたものだけど、ロケ用に軽くて便利だし、アクセサリー類を使えば、アンブレラやソフトボックスをつけられるのでファッション撮影にも効果的な機材になる。
でも、連続撮影のための積層パック(使い捨ての外部電池)が去年、生産中止になり、ナショPファンの間ではちょっとした事件になっていた。
「このまま使えなくなるのでは...?」
現行機種のPE-60SGは単2電池しか使えないので、ハードな現場での連続使用には不利だ。
そんな中、長岡造形大学の松本明彦先生から教えてもらった情報。
外部メーカーから出る出ると言われてた積層パックがついに発売になったらしい。
「ストロボ工房」(ニッシンジャパン)
http://nissin-japan.cocolog-nifty.com/blog/files/400.pdf
(※PDFなので表示にやや時間がかかります)
積層パック使用の場合、フル発行でチャージ2秒、単二電池だと最大7秒(PE60SGの場合)なので、この差はでかい。
しかも電源コード2本出しで、2台のストロボが同時使用できる。
僕も『ナショP』大好きで、最近はPE60SGをうまく工夫して乾電池で使用していた派なのだけど、選択肢の幅が広がるのは嬉しい。
写真業界は小規模メーカーに支えられている実情もあるので、是非がんばってほしい。
積層パックに関する情報は下記
「ストロボ工房」(ニッシンジャパン)
http://nissin-japan.cocolog-nifty.com
ちなみに、こちらはナショPを使って撮った写真。BabyBurnというブランドのポスター撮影。(使用機材:PENTAX645 ネガカラー 手焼き)
いきなり記事の下部に、
浮気調査
ねずみ講
探偵
などのアヤシイ広告が表示されるようになった。
普段、アヤシイ写真を撮っている僕が言うのも...変な話だけど、表示される内容がどうもまじというか、シャレになってなくて、痛々しい。
試しに問い合わせてみた。
すぐにメール返信がきて、要するに『今日からシステムが変わりました。おしらせコーナーにもすでに告知してあります。広告を表示しないブログは有料です』という、スーパードライな回答。
Jugemのブログはデザインが素晴らしく、ユーザビリティも高かったので利用してきたけど、この変貌ぶりは、WBCのイチロー風に言うと、
「昨日まで付き合ってた彼女が、急にいままでの食費や交通費を請求してきた感じ」
だろうか。
「あんたにどんだけ投資したと思ってんのよ!」みたいな。
そんな裏の気持ちがあったとは...。
急な変貌ぶりに、別れたいけど、一緒に住んでるから困ってしまう。
ネット系の企業って、急にプランを変更するのはいいけど、サポート窓口をほとんど設けないとこが問題ですね。
問い合わせのメールを書くのもそれなりに手間がかかるけど、通りいっぺんのコピペメールを受け取って、納得する人がいるんだろうか。
結構、素敵な彼女だと思ってたんだけど...。
とりあえず、あまり目立たないバナーに変更できたけど、ほんとに悲しくなってしまって、他社に変えようかと思ってしまった。
せっかくだからMySpaceに統一するか...。
ちなみに、じつは僕のMySpaceのプロフページもあります。
http://www.myspace.com/1004275854
(フレンドリクエスト受付中)


「わたしの友達もカメラマン目指してるんですよ」
「僕も写真家です」
よくそんな話を耳にする。
僕が本格的に写真を撮りはじめた頃は、90年代後半。
まさに女の子写真からはじまったブームのさなかで、爆発的に写真を撮る人口が増えていた。
僕は、流行とはまったく関係のないきっかけで写真をはじめたので、世間のそんな『熱狂』を横目で見ながら、ひとりだけクールに、冷めていた気がする。
その頃に比べれば、最近だいぶ少なくなったとは思うけど、カメラマンを目指す人はたくさんいるみたいだ。
デジタルカメラが普及し、写真はますます身近になった。
シャッターを押せば写る。
撮ってすぐ、液晶画面で確認ができる。
これって、革命的なすごいことだ。
ポジフィルムの難しい露出で四苦八苦し、写真を覚えた僕にとっては羨ましい限りだ。
でも、そんなに簡単に写真って撮れるんだろうか。
簡単に、プロになれるんだろうか?
残念ながら、答えはノーだと思う。
いままでたくさんのカメラマンに会ってきたけど、
「こいつ、ほんとうに写真に命賭けてるな」
そう思ったことはごくわずかしかない。
たくさんの人たちが写真に触れ、楽しむ。
素晴らしいことだと思う。
でも、『押せば写る』ということと『写真を撮る』ということは、絶対的に違う。
プロとして生きるのは簡単じゃない。
だから、軽々しくカメラマンとか、フォトグラファーとか、写真家と名乗らないでほしいという思いがある。
僕が本格的に写真をはじめたのは、24歳の時だ。
まわりにはうまいやつがたくさんいた。
でも残念ながら、誰ひとり残らず、消えていった。
たぶん、本当に撮りたいもの、伝えたいものがなかったんだと思う。
プロになりたいと最近よく相談されるけど、あまり甘いことは言わないようにしている。
頑張れば夢はかなうとか、無責任なことは言いたくない。
他のすべてがなくなったとしても、どうしても写真を撮りたい。
そういう人は撮り続けていけばいい。発表の方法は、いくらでもあると思うから。
ありがたい限りです。
でもごめんなさい、ひとことだけ言いたい。
「こんばんわ。○○って言います。
ブログ見ました。アシスタントやりたいです。」
こんなメールがあまりにも多いので残念。
こちらが丁寧に返信しても、まともな返事が返ってこなかったりして、さすがに疲れてきた...。
若いから?とか、そんなのが理由だとは思いません。僕は、十代の時から夜遊びばっかりで素行は悪かったけど、礼儀とか、最低限のことはきちんとしてたし、だからこそ上の世代にはかわいがってもらった。
写真を仕事にしたいと思っている人、アシスタントをやりたい人は、履いて捨てるほどいます。
職業カメラマンも、数えきれないぐらいたくさんいるし、これから10年で、もっと淘汰されるでしょう。生き残れる人は、わずかかもしれません。
プロの世界は厳しいですが、メールもきちんと書けないような人は問題外。どんな業界でも通用しないでしょう。
クリエイターの世界では『ウデがよければ人間性は二の次』とか言うこともあるけど、僕はそうは思わない。
技術を学ぶ以上に、人間的にも成長してほしい!と思います。
応募する人は、最低限のことを守って、メールしてください。
作品WEBサイトはこちら
http://www.atsushiyamada.com
<プロフィール>
写真家。95年渡豪、路上の人々を撮り始める。帰国後、フリーランスへ。ファッション、グラビア、広告など幅広く活躍中。
富士フォトサロン新人賞2006受賞。
月刊コマーシャルフォト『100 PHOTOGRAPHERS』選出 (2007,2008)
月刊コマーシャルフォト別冊『PHOTOGRAPHERS FILE』掲載 (2009,2010)
その他、各メディアにて作品掲載多数。

1st 写真集『LOVE!LIFE!LIVE!』
全国書店にて発売中
(160P 1500円・税別)
送料無料! 画像をクリック
~Amazon 紹介文より~
夜の喧噪、クラブシーン、雑踏、日常を膨大なカット数で綴り、富士フォトサロン新人賞を受賞した作品がついに写真集として発売。
選考委員から絶賛された気鋭の写真家が、自身の原点となるストリートで巡りあう、一瞬のシャッターチャンスに挑む。混沌、エロス、すべてを内包し、感性を揺さぶる本作品は、生きる、ということそのもののメッセージである。山田敦士 衝撃のデビュー作。
<帯文より>
この写真集を最後まで見た後、僕は人間の『生』を感じました。
一人一人の人生が、この中に沢山詰まっています。
人生とは、本当に素晴らしいものです。
MATSU (EXILE)
過去撮影したArtists/タレント
新垣結衣,岩佐真悠子,小倉優子,木村コウ,川村カオリ,倖田來未,甲本ヒロト,小西康陽,櫻井翔,佐藤隆太,スザンヌ,スピードワゴン,鈴木亜美,田島貴男(ORIGINAL LOVE),田中知之,戸田恵梨香,野本かりあ,福富幸宏,藤木直人,ヒカル(BOUNTY HUNTER),宮崎あおい,矢口真里,Base Ball Bear,EMMA,EXILE,Hi-Fi CAMP,JAFROSAX,JESSE,KEN ISHII,MOTOAKI,m-flo,RAM RIDER,Rio,UNDERGRAPH,UZUMAKI 他多数
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